動画を見ながらスクワットをしてみたけれど、これで合っているのか分からない。鏡を見ても、正しいのかどうか判断がつかない——筋トレを始めた方から、最も多くいただくご相談です。

フォームの解説はいくらでも見つかります。それでも迷いが消えないのは、自分で確かめられる部分と、自分では確かめようがない部分が混ざっているからです。この記事では、その線引きを先にお伝えします。読み終えるころには、今日のトレーニングで何を見ればよいかが決まります。

意識で直らない理由

「背中を丸めない」と言われて、その場では直る。けれど次のセットでまた同じ形に戻る。よくある光景です。これは集中力の問題ではありません。

崩れ方には2種類あります

ひとつは技術の崩れです。動かす順番や重心の置き場所を、まだ覚えていない状態を指します。これは繰り返せば減っていきます。

もうひとつは構造の崩れです。関節が動く範囲や筋力が足りず、そもそもその形を取れない状態を指します。こちらは意識しても直りません。動ける範囲の外にある形だからです。

この2つは見た目が似ています。ですので、うまくいかないときはまず「覚えていないのか、届いていないのか」を分けてください。順番が逆になると、練習の回数だけが増えていきます。

意識しても同じ形に戻る理由

しゃがむ途中で背中が丸まる方の多くは、足首か股関節の動く範囲が狭くなっています。足首が曲がる角度(背屈・はいくつ)が足りないと、すねを前へ倒せません。倒せないぶん、身体は別の場所で帳尻を合わせます。背中を丸めるか、かかとを浮かせるかのどちらかです。

このように、足りない動きを別の場所が肩代わりすることを代償動作(だいしょうどうさ)といいます。代償が起きている状態で「背中を伸ばして」と言われても、伸ばせば今度はかかとが浮きます。形を指示しても、原因の場所が変わっていないため戻ってしまうのです。

この場合にすることは、意識を強めることではありません。硬い場所を先に動かすか、可動範囲の狭い種目に変えるかです。どこを伸ばすかの決め方は伸ばす場所を決める3つの質問にまとめています。硬さを取る手段としての整体とトレーニングの使い分けは整体とジムのどちらに行くべきかをご覧ください。

後半だけの崩れは回数の問題

1〜5回目まではきれいで、8回目から形が変わる。これはフォームの問題ではありません。設定した回数か重さが、いまの状態に対して多いというサインです。

崩れた回を繰り返しても、狙った場所には効きません。形が保てる回数までが、その日の有効な回数だとお考えください。8回目で崩れるなら、その日は7回で止めるほうが前に進みます。

自分で直せる3つ

ここからは、鏡とスマートフォンだけで確かめられる範囲の話です。全部を見ようとすると続きません。見るのは3つに絞ってください。

1つ目|重りの通り道

バーやダンベルが、上下にまっすぐ動いているか。前後に大きく揺れていないか。これは真横から撮れば一目で分かります。通り道が前へ流れるときは、重心が前に乗りすぎています。

2つ目|止まる位置

1回目と10回目で、下ろす深さが同じか。回を重ねるほど浅くなるのはよくある変化です。深さが変わると、効く場所も変わります。鏡の高さに目印を決めておくと判断しやすくなります。

3つ目|力を入れ始める順番

動き出しの前に、息を吐ききってお腹を軽く固めているか。ここが抜けると、腰が先に反ってから動き出します。お腹を固めてから動く。この順番だけは、自分の感覚で確かめられます。腹筋の運動で腰が痛む場合は、この順番が遅れていることが多くあります。確かめ方は運動中に腰の反りを自分で確かめる方法にまとめました。

種目のタイプ真横から見る点崩れのサイン
しゃがむ系
(スクワット)
背中の丸まり
かかとの接地
途中で背中が丸まる
かかとが浮く
股関節から折る系
(デッドリフト)
お尻が後ろへ
引けているか
腰から丸めて
下ろしている
押す系
(腕立て・ベンチ)
腰の反り
肘の開き
腰が浮いて
反っている
引く系
(ローイング)
肩がすくむか肘より先に
肩が上がる

※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。

自分では見えない3か所

ここからが本題です。次の3か所は、鏡でも動画でも判断が難しい場所です。見えないものを見ようとして時間を使うより、見えないと知っておくほうが役に立ちます。

1か所目|骨盤の傾き

骨盤は身体の奥にあり、衣類にも隠れます。前に傾いているのか後ろに倒れているのかは、正面の鏡ではほとんど差が出ません。しかも骨盤の向きは、腰への負担を最も大きく左右します。

手がかりはあります。運動のあとに腰の反りが強く感じられる、前ももだけが張る、といった変化です。立ち姿の段階で骨盤が前へ傾きやすい方の見分け方は反り腰を見分ける壁テストの落とし穴で解説しています。

2か所目|肩甲骨の位置

肩甲骨(けんこうこつ・背中側にある三角形の骨)は、自分の視野に入りません。鏡は正面しか映さず、動画も服の上からでは動きが読み取れません。

押す種目でも引く種目でも、肩甲骨が先に上がってしまうと、首の付け根に負担が集まります。トレーニング後に首や肩の付け根が張る場合は、この可能性があります。腕立て伏せで肩の前や上が痛む場合の手の位置と深さの決め方は、腕立て伏せで肩が痛いときの原因と痛まない手の位置で解説しています。肩甲骨まわりが硬くなる仕組みは肩こりの原因と肩甲骨の動きに、胸椎から整える順番は猫背のタイプ別チェックと整える5つの順番にまとめました。

3か所目|足の裏の荷重

床と接している面は、上からは見えません。親指側に乗っているのか小指側に逃げているのか、左右どちらに多く乗っているのかは、映像に写らない情報です。

手がかりは靴底です。左右で減り方が違う、いつも同じ側だけがすり減る。こうした差は、荷重のかたよりを反映していることがあります。

見えない場所映らない理由代わりの手がかり
骨盤の傾き身体の奥にあり
衣類にも隠れる
運動後に腰が反る
前ももだけ張る
肩甲骨の位置背中側にあり
視野に入らない
首の付け根が張る
肩がすくむ感覚
足の裏の荷重床と接する面は
上から見えない
靴底の減り方の
左右差

※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。

この3か所は、外から見る側にとっては確認しやすい部分です。指導する立場の人間が実際に何を見ているかはトレーナーが見ている5つのことにまとめています。誰が見るかで確認できる範囲が変わる点はフォームを誰が見るかで変わるジムの選び方で解説しました。

理学療法士の視点

理学療法士は、運動の指導を始める前に身体を評価します。評価という言葉が硬ければ、「その形が取れる身体かどうかを先に確かめる作業」とお考えください。

可動域を先に測る理由

臨床で最初に測るのは、関節が動く範囲です。スクワットであれば足関節の背屈、股関節の曲がる角度、そして胸のあたりの背骨(胸椎・きょうつい)のねじれや反りを見ます。

ここで足りない角度があると、その分を腰や膝が引き受けます。同じ「背中が丸まる」でも、足首が原因の方と股関節が原因の方では、やるべきことが正反対になります。形だけを見て指導すると、この違いを取り違えます。しゃがむときに膝が痛む場合に、痛む場所と深さからどこを先に見るかはスクワットで膝が痛いときの痛む場所別の原因で整理しました。

代償動作という考え方

代償動作は、身体が動きを成立させるための工夫です。ですので、その場で禁止しても意味がありません。代償が起きない範囲まで負荷や可動範囲を下げ、足りない部分を育ててから戻します。

この考え方は、病院のリハビリで日常的に使われているものです。医療機関でのリハビリを終えたあと、どこで運動を続けるかについては病院のリハビリを終えた後の3つの選択肢で整理しています。

左右差は形より先に見ます

もうひとつ、現場で必ず見るのが左右差です。荷物をいつも同じ肩にかける、片脚に体重を預けて立つ。こうした習慣は誰にでもあります。

左右差が残ったまま両側同じ運動を続けると、得意な側だけが伸びていきます。差はむしろ開きます。ですので左右差の確認は、フォームを整えるより前の段階に置いています。女性の身体に固有の前提については女性のパーソナルジム選びの7つの基準を、出産後に運動を再開する場合の順序は産後に運動を再開する順番をご覧ください。

痛みが出たとき

フォームの話で最も大切なのが、この項目です。痛みは、形を直すべきかどうかの判断材料になります。

その場でやめる3つの基準

  • 鋭い痛みが出た——重だるさではなく、刺すような感覚があるとき
  • 特定の1点が痛む——広い範囲ではなく、指で示せる狭い場所が痛むとき
  • 翌日以降も同じ場所が痛む——筋肉痛と違い、日を追って軽くならないとき

この3つのいずれかがあれば、その日はその種目を中止してください。重さを軽くして続ける判断は、痛みが出ていない場合に限ります。

医療機関を受診すべきサイン

  • 痛みで夜に目が覚める、じっとしていても痛む
  • 手や足にしびれ、力の入りにくさがある
  • 関節が腫れている、熱をもっている
  • 2週間以上たっても同じ痛みが続いている
  • 転倒や強くひねった直後から痛みが出た

これらにあてはまる場合は、トレーニングの前にまず整形外科の受診をおすすめします。当店は医療機関ではないため、診断や治療は行えません。痛みの原因を確かめることは、運動を再開する順番を決めるうえでも必要です。腰に不安がある方向けの考え方は腰痛の原因と対策にまとめています。

安定するまでの4週間

最後に、進め方の目安をお伝えします。重さを増やしたくなるのは自然なことですが、順番を守るほうが結果的に早く進む方が多くいらっしゃいます。

週ごとの進め方

時期主に確かめること重さの扱い
1週目動きの形を覚える10回を余裕をもって
行える重さ
2週目止まる位置をそろえる変えない
3週目左右差を見る変えない
4週目後半でも形が保てるか保てていれば
ここで増やす

※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。

期間には個人差があります。4週間で必ずそろうという意味ではありません。目安として区切りを置くと、判断がしやすくなるという趣旨です。

重さを上げてよい合図

次の3つがそろったときが、増やしてよい合図です。最終セットでも形が変わらない。左右の高さや深さがそろっている。翌日に鋭い痛みが残っていない。ひとつでも欠けていれば、同じ重さでもう1週続けてください。

体調によって内容を変えられる通い方であれば、この調整はしやすくなります。頻度と内容の組み立て方は体調に合わせて内容を変えられる通い方を、減量と並行する場合の進め方はリバウンドを繰り返さない5つの手順をご覧ください。指導を受ける場合の費用感はパーソナルジムの月額の目安と隠れコストにまとめています。

まとめ

筋トレのフォームは、意識の強さでは決まりません。崩れには技術の崩れと構造の崩れがあり、後者は動く範囲を広げないかぎり同じ形に戻ります。自分で確かめられるのは、重りの通り道・止まる位置・力を入れ始める順番の3つ。一方で骨盤の傾き・肩甲骨の位置・足の裏の荷重の3か所は、鏡にも動画にも映りません。痛みが出たときは、鋭い痛み・1点の痛み・翌日以降も続く痛みを基準に中止してください。この線引きができれば、練習の精度は上がっていきます。

武蔵浦和駅徒歩3分のパーソナルジムLIMITED武蔵浦和店では、トレーニングの前に姿勢と関節の動く範囲を評価します。トレーナーは全員が医療系国家資格「理学療法士」を持ち、全米エクササイズ&スポーツトレーナー、JATIトレーニング指導者、PHIピラティスインストラクターなどの資格を持つ者が在籍しています。さいたま市南区・中浦和・南浦和・北戸田・戸田市エリアから、デスクワーク中心の方や運動が久しぶりの方が通われています。理学療法士が担当するジムの違いは理学療法士のいるジムと普通のジムの違いをご覧ください。

自分では見えない3か所を一度確かめてみたい方は、60分の体験トレーニング(5,000円・税込)で姿勢と動作のチェックを受けてみてください。ご予約は下のボタンのほか、公式LINEから24時間受け付けています。器具に触ったことがない段階でも大丈夫です。

よくある質問

フォームの動画は、いつ、どこから撮ればよいですか?

毎回撮る必要はありません。撮る価値が高いのは3つの場面です。1つ目は、新しい種目を始めた日。2つ目は、重さを増やす前の1セット。3つ目は、疲れが出やすい最後のセットです。この3つに絞ると、月に数回で足ります。撮る向きは正面ではなく真横をおすすめします。スクワットもヒップヒンジも、崩れが最初に出るのは背中の丸まりと股関節の折れ方で、これは正面からはほとんど見えないためです。撮った動画は、その場で早送りせず等倍で1回だけ見てください。速く再生すると、動きが速くなったように見えて判断がずれます。見る点は、痛みが出ていないか、左右で高さが違わないか、後半のセットだけ形が変わっていないかの3つで十分です。

体が硬いのですが、フォームは身につきますか?

硬さがあるままでも進められます。ただし順番が変わります。硬さが理由で正しい形が取れない場合、その形を意識で作ろうとすると、別の関節が代わりに動いて負担を引き受けます。これを代償動作といいます。ですので、硬い部分がある方は、その部位の動く範囲を先に広げてから同じ種目に戻るほうが早く進みます。よくあるのは足首と股関節と胸のあたりの硬さで、しゃがむ深さや背中の丸まりに直接影響します。もうひとつの方法は、種目そのものを変えることです。深くしゃがめないうちは可動範囲の狭い種目から始め、動く範囲が広がってから元の種目へ戻します。硬さは、トレーニングを止める理由ではなく、順番を決める材料だとお考えください。

独学でフォームを覚えるのに、どれくらいかかりますか?

期間には個人差が大きく、何週間で身につくと言い切ることはできません。目安として、同じ重さで4週間ほど続けると、疲れた後半でも形が保てるかどうかが見えてきます。そこまでは重さを増やさずに繰り返すほうが、結果的に早く進む方が多くいらっしゃいます。独学で難しいのは、覚える速さではなく、間違いに自分で気づけない点です。骨盤の傾きや肩甲骨の位置は鏡にも動画にも映りにくく、ご本人の感覚と実際の動きがずれていることがあります。最初の数回だけでも第三者に動作を見てもらい、確認すべき点を決めてから独学に戻ると、その後の練習の精度が上がります。全部を任せる必要はありません。

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