腕立て伏せを始めたら、胸や腕より先に手首が痛くなる。プランクやヨガで床に手をついたときも、手の甲側がつまる感じがする——体験トレーニングで上半身の運動をすると、女性の方やデスクワーク中心の方から特によく伺う悩みです。

この記事では、痛む場所によって手首に起きていることが変わること、反らしすぎない手のつき方、タオルとプッシュアップバーの使い分け、受診したほうがよいサインをお伝えします。読み終えるころには、次の1セットで手の置き方の何を変えるかが決まります。

腕立てで手首が痛む仕組み

はじめに、腕立て伏せのあいだ手首に何が起きているかを整理させてください。ここが分かると、あとの表と手のつき方が読みやすくなります。

腕立ての手首は約90度反る

床に手のひらをつき、前腕(肘から手首まで)を床に垂直に立てると、手首は手の甲側へおよそ90度反った状態になります。一方で、手首を手の甲側へ反らせる角度は、一般に70度前後が標準とされています。

つまり腕立て伏せは、標準的な可動域より深い角度で、さらに体重を乗せる運動です。体を下ろしたときに肩が手より前へ出ると、反る角度はもっと大きくなります。手首が痛む方が多いのは、ある意味で当然の構造なのです。

体重は手のひらの付け根へ

手首を深く反らせて体重を乗せると、体重は自然に手のひらの付け根(手根部・しゅこんぶ・手首に近い、手のひらの硬い部分)へ集まります。指は床から浮きかけ、手首の関節の手の甲側では骨同士の間が狭くなります。

手の甲側の「つまる」「はさまる」感じは、この狭くなった部分で起きていることが多くあります。体重を指の付け根へ分けられるかどうかが、あとでお伝えする手のつき方の中心です。

原因は3つにまとまります

臨床で腕立て伏せの手首の痛みを見ていると、原因はおおむね次の3つに分かれます。

  • 反る角度:今の手首が持っている角度を超えて反らせている
  • 体重の乗る場所:手のひらの付け根の一点、または小指側に体重が集まっている
  • 手首を支える力:前腕の筋肉が働かず、手首の関節だけで体重を受けている

一般的な解説の多くは、1つ目の「手を置く位置」と「プッシュアップバーを使う」で話を終えます。ただ、位置を直してバーを使っても痛む方は少なくありません。その場合は2つ目か3つ目が残っています。

痛む場所で分ける

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。手首の痛みは、指1本で場所を指せることが多い痛みです。まず、手の甲側・小指側・親指側・手のひら側のどこが痛むかを確かめてください。

場所と局面の早見表

痛む場所痛みやすい局面起きやすいこと先に見る所
手の甲側の真ん中一番下反りすぎて、関節の手の甲側がつまる反る角度
小指側押し上げ・回数の後半体重が小指側へ流れ、小指側のクッションに圧が集まる体重の乗る場所
親指側手をつく瞬間・押し上げ親指を大きく開いて床を押し、親指側の腱が引っぱられる親指の開き方
手のひらの付け根一番下で長く止まったとき付け根の一点に体重が乗り続ける指の付け根への分散
前腕の内側の張り翌日手首を支える筋肉が疲れている回数とセット数

いちばん多いのは手の甲側の真ん中です。次が小指側です。小指側には、手首の骨と前腕の骨の間でクッションの役割をする組織(三角線維軟骨複合体・TFCC・手首の小指側を支える軟骨と靭帯の集まり)があります。体重が小指側へ流れたまま回数を重ねると、ここに負担が集まりやすくなります。

親指側の痛みは、手を大きく広げようとして親指を真横へ開きすぎている方に多く見られます。親指は人差し指の延長線上から軽く開く程度で十分です。

しびれを伴うときは別に扱う

手のひら側の付け根を通って、指へ向かう神経があります。手首を深く反らせて体重を乗せると、この神経の通り道が圧迫されることがあります。親指から薬指にかけてしびれる、ピリピリするという場合は、痛みとは性質が違います。

しびれが運動後もしばらく残る、夜にしびれで目が覚める、という場合は腕立て伏せを中止し、整形外科で確認してもらってください。首を動かすと腕から指へしびれが走る場合も、手首ではなく首からの症状の可能性があるため、同じく受診をおすすめします。

手首を反らしすぎないつき方

場所が分かったら、次は手のつき方を変えます。どれも道具なしで、その日から試せます。肩が一緒に痛む方は、手の位置と下ろす深さを腕立て伏せで肩が痛いときの手の位置と深さで先に確認してください。手首と肩は同じ「手の位置」から影響を受けます。

指の付け根で床をつかむ

手を床についたら、指の付け根の盛り上がった部分(手のひら側の指の付け根)で床を押し、指先で床を軽くつかむようにしてください。手のひらの真ん中が、床からほんの少し浮くくらいが目安です。

こうすると、手のひらの付け根に集まっていた体重が、指の付け根へ分かれます。とくに人差し指の付け根で床を押す意識を持つと、小指側へ流れていた体重が内側へ戻ります。小指側が痛む方は、まずここから試してください。

指先の向きを15度ずつ変える

指先をまっすぐ正面に向けるのが正解、とは限りません。手首や肘の形には個人差があり、痛まない向きは人によって違います。

正面を基準に、指先を15度ずつ外へ向けて、壁や台に手をついて体重をかけてみてください。正面・15度・30度の3つを左右で比べ、いちばん手首が楽な向きを選びます。ほとんどの方は正面から30度外までのどこかに楽な向きがあります。指先を内側へ向ける形は、肘と手首の小指側に負担がかかりやすいため避けます。

付け根の下にタオルを入れる

反る角度そのものを減らすいちばん簡単な方法は、手のひらの付け根の下に、たたんだタオルを入れることです。付け根が数センチ持ち上がるだけで、手首が反る角度は小さくなります。

手の甲側の真ん中が痛む方は、この方法で痛みが出にくくなることが多くあります。タオルの厚みは、痛みが出ない範囲でいちばん薄いものにしてください。痛みが落ち着いてきたら、少しずつ薄くして角度を戻していきます。タオルを使わずに済む状態がゴールです。

理学療法士の視点|手首は前腕から支える

ここからは、臨床で手首の痛みを評価するときに実際に見ているものをお伝えします。

反る角度は前腕の傾きで決まる

手首が何度反るかは、手首だけでは決まりません。床に対して前腕がどれだけ傾くかで決まります。体を下ろしたときに肩が手より前へ出ると、前腕は前へ傾き、手首は90度を超えて反ります。逆に、肩が手の真上かやや後ろにあれば、手首は90度以内に収まります。

ですから評価では、痛む手首より先に、一番下の姿勢を横から見ます。前腕が床に垂直に立っているか、肩が手より前へ流れていないか、です。ここは肩の痛みを見るときと同じ基準で、手首と肩の両方を守る形になります。フォームのうち自分で見られる所と見られない所の境目は、筋トレのフォームで自分では見えない3か所で整理しています。

握る筋肉が手首を守る

前腕の手のひら側には、指を曲げて物を握る筋肉(前腕屈筋群・ぜんわんくっきんぐん・手首と指を手のひら側へ曲げる筋肉)が並んでいます。指の付け根で床をつかむと、この筋肉が働いて、手首の手のひら側から関節を支えます。

手のひらをべたっと置いた手は、筋肉ではなく関節で体重を受けている手です。床をつかんだ手は、筋肉で体重を受けている手です。同じ腕立て伏せでも、手首の関節にかかる負担はここで大きく変わります。当店では、指先で床をつかんだまま、手のひらの真ん中だけを床から浮かせる練習を、壁に手をつく段階から行ってもらいます。

マウスとスマホの手首

長時間のデスクワークでは、マウスやキーボードを使うあいだ、手首は軽く反ったまま固定されています。スマートフォンを持つ手は、手のひら側へ曲がったまま長く止まっています。どちらも、手首を大きく反らせて体重を乗せる動きはほとんどありません。

そのため、仕事帰りに腕立て伏せを始める方ほど、反る角度が足りないことがよくあります。自分の角度は、胸の前で両手を合わせ、手のひらを離さずに肘を下げていく「合掌のテスト」で確かめられます。前腕が床と平行になる前に手のひらの付け根が離れる場合は、腕立て伏せに必要な角度が足りていません。左右差もここで分かります。

角度を取り戻すには、四つ這いで手をつき、体を前後にゆっくり揺らして、痛まない範囲で手首を反らせる時間をつくります。1回30秒ほどを、仕事の合間に数回で十分です。どこを伸ばすかの決め方はストレッチで伸ばす場所を決める3つの質問に、肩が前へ出た姿勢の整え方は猫背改善の5つの順番にまとめました。

こうした評価の違いは、理学療法士のいるジムと普通のジムの違いとトレーナーがセッション中に見ている5つのことで整理しています。

痛むあいだの続け方

手首が痛むあいだも、押す運動をすべて止める必要はありません。考え方は「手首の角度を減らすか、手首に乗る体重を減らすか」の2つです。

グーとバーの使い分け

方法手首への影響注意する点
タオルを入れる反る角度が少し減るまず最初に試す。薄くして戻していく
プッシュアップバー手首をまっすぐ保てる握りが弱いと横へ倒れる。深く下ろしすぎない
グー(拳)手首をまっすぐ保てる人差し指と中指の付け根で受ける。床が硬い所では行わない
ダンベルを握るバーと同じ転がらない六角形のものに限る

バーやグーは、手首の反りをほぼゼロにできる便利な方法です。ただし、手首をまっすぐ保つ力が足りないと、小指側や親指側へ倒れて別の場所が痛みます。手首の甲側の痛みが強い時期の一時的な手段として使い、並行して床をつかむ手のつき方を練習してください。

角度で体重を減らす

手をつく位置が高いほど、手首に乗る体重は軽くなります。壁、キッチン台、膝つき、通常の腕立て伏せの順に、段階を上げていきます。段階の進め方と次へ進む条件は、壁から戻す4段階と次へ進む条件をそのまま使えます。

プランクで手首が痛む方は、肘をついたプランクに切り替えれば手首には体重が乗りません。腹筋の種目で腰が気になる方は、腹筋で腰が痛いときの4つの原因もあわせてご覧ください。脚の種目で膝が痛む方はスクワットで膝が痛いときの原因と代わりの種目で解説しています。

やめる日と受診する日

「少しでも痛んだら中止」とすると、手首に不安のある方はいつまでも運動を再開できません。量の判断は、運動中は10段階で3まで・翌朝で判定する目安を手首にもそのまま使えます。そのうえで、次のサインは別に扱ってください。

その日はやめるサイン

次のどれかが出た日は、その日の腕立て伏せを中止してください。

  • 手首の一点に、刺すような鋭い痛みが出た
  • 回数を重ねるほど、痛みが強くなってきた
  • 手首を回すと、小指側でコキッと引っかかる感じがある
  • 終わったあと、ドアノブを回す・ペットボトルを開ける動きで痛む
  • 翌朝、手をついて起き上がるときに痛みが残っている

受診をすすめるサイン

当店は医療機関ではありませんので、診断や治療は行えません。次のような場合は、運動やセルフケアより先に整形外科へご相談ください。

  • 手をつかなくても痛む、夜に痛みで目が覚める
  • 手首が腫れている、熱を持っている
  • 親指から薬指にかけてしびれる、力が入りにくい
  • 転んで手をついた後から痛みが続いている
  • 2週間ほど運動を控えても痛みが変わらない

転んで手をついた後の手首の痛みは、骨の小さなひびが隠れていることがあり、時間がたってから分かる場合もあります。腕立て伏せで様子を見るのではなく、早めに受診してください。医療機関でのリハビリを終えたあとに運動を再開する場合の進め方は、病院のリハビリを終えた後の3つの選択肢にまとめています。手技と運動のどちらを先にするかで迷う場合は、整体とジムのどちらに通うべきかの判断軸が参考になります。

まとめ

腕立て伏せで手首が痛いとき、原因はおおむね反る角度・体重の乗る場所・手首を支える力の3つです。まず痛む場所を確かめ、手の甲側なら角度、小指側なら体重の乗る場所を先に見直します。手をついたら指の付け根で床をつかみ、人差し指の付け根で押します。指先の向きは15度ずつ変えて、楽な向きを選んでください。手の甲側が痛む時期は、手のひらの付け根の下にたたんだタオルを入れて角度を減らします。しびれがある、腫れや熱がある、転んで手をついた後から痛む場合は、運動を止めて受診してください。

武蔵浦和のジム・パーソナルジムLIMITED武蔵浦和店は、JR武蔵浦和駅から徒歩3分のジムです。さいたま市南区・中浦和・南浦和・北戸田・戸田市エリアから、デスクワークで手首や肩に負担を抱えやすい方や、家での筋トレを見直したい方が通われています。トレーナーは全員が医療系国家資格「理学療法士」を持ち、加えて全米エクササイズ&スポーツトレーナー、JATIトレーニング指導者、PHIピラティスインストラクターなどの資格を持つ者が在籍しています。通い放題プランではトレーニング・整体・ボクササイズを追加料金なしで選べるため、同じ担当者が手技と運動の配分を決められます。ウェアのレンタルとウォーターサーバーがあり、キッズスペースもございます。営業時間は8:00〜22:00です。

自分の手首がどのつき方なら痛まないのかを一度見てもらいたい方は、60分の体験トレーニング(5,000円・税込)で手首の角度と腕立て伏せのチェックを受けてみてください。ご予約は下のボタンのほか、公式LINEから24時間受け付けています。運動が初めての方も、まず壁に手をつくところから一緒に始めましょう。

よくある質問

腕立て伏せで手首が痛いときは、休んだほうがよいですか?

痛みが出た手のつき方の腕立て伏せは、その日は中止してください。ただし、上半身の運動をすべて止める必要はないことが多くあります。手のひらの付け根の下にたたんだタオルを入れる、壁や台に手をついて体重を減らす、といった調整で痛まずに続けられる方が多くいらっしゃいます。目安は、運動中の痛みが10段階で3以下にとどまり、翌朝に運動前より悪くなっていないことです。手をつかなくても痛む、腫れや熱がある、指にしびれが出る、転んで手をついた後から痛む、という場合は運動を続けず、整形外科を受診してください。当店は医療機関ではありませんので、診断や治療は行えません。

プッシュアップバーを使えば手首は痛くなりませんか?

バーを握ると手首をまっすぐ保てるため、手の甲側が詰まる痛みは出にくくなることが多くあります。一方で、握る力が弱いと手首が小指側や親指側へ倒れ、別の場所が痛むことがあります。また、バーは床より高い位置で押すため、深く下ろしすぎると今度は肩の前に負担が移ります。バーを使う場合も、手首が前腕の延長線上にまっすぐ乗っているかと、下ろす深さを確認してください。まずはたたんだタオルで角度を減らし、それでも痛む場合にバーを試す順番がおすすめです。

腕立て伏せで手首が痛いのは、手首が弱いからですか?

手首そのものの強さより、反る角度が足りないことと、体重が手のひらの付け根の一点に集まっていることが原因になっている方が多くいらっしゃいます。腕立て伏せでは、手首はおよそ90度反った状態で体重を受けます。日常生活で手首をそこまで反らせて体重を乗せる場面は少ないため、デスクワーク中心の方ほど角度が足りなくなりがちです。手首を鍛えるより先に、指の付け根で床をつかんで体重を手のひら全体に分けることと、反る角度を少しずつ取り戻すことから始めてください。

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