お腹を引き締めたくて腹筋を始めたのに、なぜか腰のほうが痛くなる。動画のとおりにやっているつもりでも、終わるころには腰が張っている——体験トレーニングでお話をうかがうと、かなりの割合でこの話が出てきます。

この記事では、痛む「時点」で原因が4つに分かれること、種目ごとに腰が反る場所が違うこと、そして運動中に自分で確かめる方法をお伝えします。読み終えるころには、次の1回をどう変えればよいかが決まります。

腹筋で腰が痛くなる仕組み

はじめに、腰で何が起きているのかを整理させてください。ここが分かると、あとの判断がすべて楽になります。

反った分だけ、腰に仕事が回る

腰の骨(腰椎・ようつい)は、前に丸める動きよりも、後ろへ反る動きに弱い構造をしています。背中側にある小さな関節どうしが、反ったときに近づいて接触するためです。

腹筋の運動中に腰が床から浮く、いわゆる「腰が反る」状態が続くと、この接触した状態のまま繰り返し力がかかります。痛みが出ているのは、動かしすぎている腰のほうです。お腹の筋肉そのものが痛んでいるわけではありません。

ですから「お腹に効いていないのに腰だけ疲れる」という感覚は、正確な自己観察です。効かせたい場所と負担がかかっている場所が、実際に入れ替わっています。

お腹より先に股関節が働いている

もうひとつの主役が、腸腰筋(ちょうようきん・太ももを持ち上げる、お腹の奥にある筋肉)です。背骨の腰の部分から太ももの骨へ、身体の内側を斜めに走っています。

この筋肉は脚を持ち上げるときに働きます。そして背骨の腰の部分にくっついているため、強く働くと腰を前へ引っぱって反らせる方向にも力が出ます。脚を上げ下げする種目や、足を固定して行う上体起こしで腰が痛くなりやすいのは、この構造が理由です。

お腹の力が追いつかない状態で腸腰筋だけが強く働くと、腰は反ったまま脚の重さを支えることになります。これが、腰に負担が集まる典型的な形です。

「腹筋が弱いから」だけでは説明がつきません

一般的な解説の多くは、ここで「腹筋が弱いからです」と結びます。ただ、実際に評価をしていると、その説明では合わない方が少なからずいらっしゃいます。

たとえば、上体起こしを30回続けられるのに、脚を下ろす場面だけで腰が浮いてしまう方です。筋力があっても、働き始めるタイミングが遅ければ腰は反ります。強さの問題ではなく、順番の問題です。

逆に言えば、回数を増やしても順番は変わりません。ここが、頑張っているのに痛みだけ増えていく理由です。姿勢の面から見た同じ現象は、反り腰で腹筋より先に見る3か所で詳しく整理しています。

痛む時点で分かれる4つの原因

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。「腹筋で腰が痛い」は、ひとつの現象ではありません。どの瞬間に痛むかで、起きていることが変わります。まず、いつ痛むのかを思い出してください。

①脚を下ろすときに痛む

仰向けで脚を下ろしていく途中、床に近づくほど腰が浮いてくるパターンです。4つのうち、もっとも多く見られます。

脚が床に近づくほど、腰にとっての負担は大きくなります。てこの原理で、支点から遠いほど重くなるためです。お腹の力が先に限界を迎えると、その瞬間から腰が肩代わりします。痛むのは下ろしきる手前の数十度という方が多く、そこが今の限界点です。

②起き上がる瞬間に痛む

上体を起こし始めた瞬間、腰の下のほうに差し込むような感覚が出るパターンです。勢いをつけて起きている方に多く見られます。

反動で起きると、背骨は丸まる前に一度反ります。ここで痛む場合、足を誰かに押さえてもらっている、あるいは足を家具に引っかけている条件が重なっていることがほとんどです。足が固定されると腸腰筋が働きやすくなり、腰が引っぱられます。

③終わった後や翌日に痛む

運動中は平気なのに、その日の夜や翌朝に腰が重くなるパターンです。動作の問題より、量と回復の問題であることが多くあります。

ただし、ここには④として分けておきたい形があります。特定の角度で毎回同じように痛む場合です。4つを表にまとめます。

痛む時点起きていること先に見る所
①脚を下ろす途中お腹の力が先に限界になり、腰が肩代わりしている脚を下ろす範囲を狭める
②起き上がる瞬間反動で一度反ってから丸めている/足が固定されている足を固定しない
③終わった後・翌日量が今の回復力を超えている1回あたりの回数と頻度
④毎回同じ角度で痛む特定の動きで繰り返し同じ場所に当たっているその動作は中止し受診

①と②は、やり方を変えることで負担を減らせる範囲です。③は量の調整で対応できます。④だけは性質が違います。角度が決まっていて毎回再現する痛みは、身体の中で同じ組織に繰り返し当たっている可能性があるためです。この場合は運動を続けず、整形外科へご相談ください。

種目別|腰が反るのはどこか

「腹筋」とひとまとめに呼ばれていますが、腰が反る場面は種目ごとに違います。自分がやっている種目がどこに当たるかを確かめてください。

日数ではなく条件で決めます

表の見方について、先にお断りをさせてください。ここに「何日後から」「何回から」という数字は書いていません。腰が反るかどうかは期間ではなく、その人の可動域と負荷の掛かり方で決まるためです。

ですので右の列には、その種目を続けてよいかを判断するための条件を置いています。条件が通らない種目は、今の段階では順番が早い、というだけの意味です。

種目腰が反りやすい場面通したい条件
レッグレイズ(脚を上下)脚が床に近づく最後の30度腰の下の手の感触が変わらない
上体起こし(足を固定)起き上がり始めの一瞬足を固定せずに起き上がれる
クランチ(肩甲骨まで)戻すときに腰が浮く戻す動作をゆっくり行える
V字腹筋脚と上体が同時に動く全域上の2つで痛みが出ない
プランク30秒を過ぎて腰が落ちる時お尻を締めた姿勢を保てる
腹筋ローラー前へ伸びきる手前膝つきで腰が落ちない
自転車こぎ動作下側の脚が伸びきる時息を止めずに続けられる

反りやすさには順番があります

表の上から順に、脚の重さが腰にかかる度合いが変わります。もっとも負担が大きいのは、両脚をそろえて伸ばしたまま下ろす形です。脚2本ぶんの重さが、腰から遠い位置にかかるためです。

ですから、同じレッグレイズでも膝を曲げれば負担は下がります。片脚ずつにすれば、さらに下がります。種目を変えるより先に、同じ種目の中で条件を変えるほうが確実です

置き換えるときの考え方

腰が反る種目を外したあと、何を入れるかで迷う方が多くいらっしゃいます。目安は「腰の位置を動かさずにお腹へ負荷が入るか」です。

脚を高い位置で止めたまま保つ、片脚だけを動かす、息を吐ききったところで数秒保つ。いずれも腰の角度を変えずに負荷を上げられます。種目選びが自分で判断しにくい理由は、自分で直せる所と直せない3か所にまとめました。出産後に運動を再開する場合は、種目ごとの順番が変わりますので産後に種目別でいつから始めてよいかをご覧ください。

運動中に自分で確かめる3つの方法

反り腰のチェックとして「仰向けで腰の下に手のひらが何枚入るか」という方法が知られています。ただ、これはじっとしている姿勢の測り方です。痛みが出ているのは動いている最中ですので、動作中に測る方法が要ります。

1つ目|手の感触が変わらないか

仰向けで両膝を立て、腰の下に手のひらを1枚だけ差し込みます。そこから膝を立てたまま片脚を持ち上げ、ゆっくり下ろします。

このとき見るのは、枚数ではありません。動作の途中で手にかかる圧が抜けないかです。脚を下ろす途中で手がすっと軽くなるなら、その瞬間に腰が浮いています。軽くなる直前の角度が、今日の限界です。そこまでで止めてください。

2つ目|息が止まっていないか

お腹の深い層は、呼吸と一緒に働きます。息を止めて力むと、一時的には固まりますが、続けられる時間は短くなります。そして息が切れた瞬間に、腰が代わりをします。

目安は、動作中に短く声を出せるかどうかです。声が出せないほど固めているなら、負荷が今の段階より上です。呼吸と姿勢のつながりについては、猫背を改善する5つの順番でも扱っています。

3つ目|その日はやめるサインと受診のサイン

次のどれかが出た日は、その動作を中止してください。翌日に再開するかどうかは、痛みが完全に引いてから決めます。

  • 腰の一点に、差し込むような鋭い痛みが出た
  • 回数を重ねるほど、腰の反りが大きくなってきた
  • 終わったあとに、お腹ではなく前ももだけが強く張っている
  • お尻から脚にかけて、しびれや突っぱる感じが出た
  • 翌日になっても、前かがみや寝返りで痛みが残っている

あわせて、当店は医療機関ではありませんので、診断や治療は行えません。次のような場合は、運動やセルフケアより先に整形外科へご相談ください。

  • 安静にしていても痛む、夜に痛みで目が覚める
  • 脚にしびれがある、力が入りにくい、感覚が鈍い
  • 排尿や排便の感覚に変化がある
  • 発熱を伴う、転倒や強くぶつけた後から痛みが続いている
  • 特定の角度で毎回同じ痛みが再現する

腰痛そのものの原因の切り分けは腰痛の原因と対策に、医療機関でのリハビリを終えた後の進め方は病院のリハビリを終えた後の3つの選択肢にまとめています。

理学療法士の視点|お腹が働く順番

ここからは、臨床でお腹の使い方を評価するときに実際に見ているものをお伝えします。

お腹は、動き出すより先に働きます

腕を前へ上げる動作を思い浮かべてください。このとき、腕を動かす筋肉より先にお腹の深い層(腹横筋・ふくおうきん・お腹をぐるりと巻くコルセット状の筋肉)が働きます。数十ミリ秒という短い差ですが、順番は決まっています。

先に働く理由は、動いたときに身体がぐらつかないよう、背骨をあらかじめ固めておくためです。この働きは、腰に痛みを抱えた経験のある方で遅れやすいことが知られています。

つまり、痛みが先か順番の乱れが先かは一概には言えません。ただ確かなのは、回数を増やしても、この順番そのものは変わらないということです。変えるには、順番を意識できる負荷まで一度下げる必要があります。

腹直筋と腸腰筋は役割が違います

いわゆる「割れる筋肉」は腹直筋(ふくちょくきん・みぞおちから恥骨まで縦に走る筋肉)で、背骨を丸める働きをします。一方、腸腰筋は脚を持ち上げる筋肉です。

脚を上げ下げする種目は、名前に腹筋と付いていても、実際の主役は腸腰筋であることが少なくありません。お腹に効かせるつもりが、股関節の前を鍛える運動になっているわけです。前ももや脚の付け根だけが張るのは、このサインです。

評価では、脚を動かしたときに腰の反りが増えるかどうかで、この入れ替わりを確かめます。硬さが関わっている場合は、伸ばす場所の選び方が変わります。ストレッチで伸ばす場所を決める3つの質問をご覧ください。

左右差と、肋骨の位置も見ています

お腹の使い方には、ほぼ全員に左右差があります。片側だけ腰が浮く、片側だけ脚が重い、という訴えは珍しくありません。左右差そのものは異常ではなく、大きさと痛みの有無で判断します。

もうひとつ見るのが、肋骨の位置です。息を吐ききれずに肋骨が開いて上を向いたままだと、お腹の筋肉は力を出しにくい位置に置かれます。この状態で回数だけを増やしても、働くのは腰側です。肋骨と肩甲骨の関係については肩甲骨はがしと動かすべき3か所でも触れています。

こうした評価をしたうえでメニューを組むかどうかは、担当者によって変わります。何を見ているかの違いは、理学療法士のいるジムと普通のジムの違いトレーナーがセッション中に見ている5つのことで整理しました。

痛みを出さずに進める順番

最後に、明日からの進め方をまとめます。1日およそ10分で、順番は入れ替えないでください。

4つのステップ

  1. 息を吐いて肋骨を下ろす:仰向けで両膝を立て、口から8秒かけて細く吐きます。吐ききる手前でお腹の底に力が入る位置を探します。5呼吸
  2. 腰の圧を保ったまま片脚:腰の下に手を入れ、圧が抜けない範囲で片脚だけを持ち上げて下ろします。左右5回ずつ
  3. 両脚は膝を曲げたまま:ステップ2で圧が抜けなくなってから進みます。膝を曲げたまま、浮かせて戻します。5回
  4. 脚を伸ばすのは最後:ここまでが痛みなく通ってから、下ろす範囲を少しずつ広げます

お腹を割りたい方ほどステップ4から始めがちですが、順番が逆です。腰が反る条件を残したまま負荷を上げても、負担が増えるのは腰のほうです。

回数より先に決めること

「何回やればよいか」は、よくいただく質問です。ただ、先に決めるべきは何回で腰が反り始めるかのほうです。反り始める1回手前が、今のあなたの適量になります。

この数字は週ごとに変わります。増えていけば順番が変わってきたサインです。一方で、体脂肪を落とす目的が主であれば、腹筋の回数はそもそも主役になりません。食事と全身の運動の配分についてはリバウンドを繰り返さない5つの手順で扱っています。女性の身体に固有の前提は女性のパーソナルジム選びの7つの基準にまとめました。

また、腰の張りが肩や背中と連動している方もいらっしゃいます。その場合は肩こりの原因と解消法もあわせてご覧ください。手技と運動のどちらを先にするかで迷う場合は、整体とジムのどちらに通うべきかの判断軸が参考になります。頻度の決め方は通い放題の損益分岐と週何回通うべきかの考え方、費用の見方はパーソナルジムの月額の目安と隠れコスト、評価のあるジムの見分け方はジムの4タイプと選び方をご覧ください。

まとめ

腹筋で腰が痛いとき、痛んでいるのは動かしすぎている腰のほうです。原因は「いつ痛むか」で4つに分かれます。脚を下ろす途中なら範囲を狭める、起き上がる瞬間なら足を固定しない、翌日に残るなら量を見直す。毎回同じ角度で痛む場合だけは性質が違いますので、運動を止めて受診してください。確かめ方は、腰の下に入れた手の圧が動作中に抜けないかどうか。枚数ではなく、動いている最中の変化を見ます。順番は、息を吐いて肋骨を下ろす、片脚、膝を曲げた両脚、最後に伸ばす。回数より先に、腰が反り始める手前の数を知ることから始めてください。

武蔵浦和のジム・パーソナルジムLIMITED武蔵浦和店は、JR武蔵浦和駅から徒歩3分のジムです。さいたま市南区・中浦和・南浦和・北戸田・戸田市エリアから、デスクワーク中心の方や運動が久しぶりの方が通われています。トレーナーは全員が医療系国家資格「理学療法士」を持ち、加えて全米エクササイズ&スポーツトレーナー、JATIトレーニング指導者、PHIピラティスインストラクターなどの資格を持つ者が在籍しています。通い放題プランではトレーニング・整体・ボクササイズを追加料金なしで選べるため、同じ担当者が手技と運動の配分を決められます。ウェアのレンタルとウォーターサーバーがあり、キッズスペースもございます。営業時間は8:00〜22:00です。

自分が何回目から腰を反らせているのかを一度見てもらいたい方は、60分の体験トレーニング(5,000円・税込)で姿勢と動作のチェックを受けてみてください。ご予約は下のボタンのほか、公式LINEから24時間受け付けています。運動が初めての方も、まず呼吸と片脚から一緒に始めましょう。

よくある質問

腹筋で腰が痛いのは、腹筋が弱いからでしょうか?

力の強さより、働く順番とタイミングのほうが関係していることが多くあります。お腹の深い層は、本来は手足が動き出すより先に働いて腰を固めます。この先行が遅れると、先に腰が反ってから動き出すことになり、反った分の負担が腰に集まります。つまり同じ筋力でも、順番が違えば痛みの出方は変わります。実際、腹筋の回数をこなせる方でも、脚を下ろす場面だけ腰が浮いてしまう方はいらっしゃいます。回数を増やす前に、動作中に腰の反りが増えていないかを先に確かめてください。痛みが強い場合や、しびれを伴う場合は、運動より先に整形外科へご相談ください。当店は医療機関ではありませんので、診断や治療は行えません。

腰が痛くならない腹筋の種目はありますか?

誰にでも安全な種目という形では決まりません。同じ種目でも、腰が反るかどうかは可動域と負荷の掛け方で変わるためです。判断の目安になるのは、腰の下に入れた手の感触が動作中に変わらないこと、息を止めずに続けられること、終わったあとに前ももではなくお腹側に疲れが残ることの3点です。この3点が保てる範囲なら、脚を高い位置で止める、膝を曲げる、動かす範囲を狭くする、といった調整で続けられる方が多くいらっしゃいます。逆に、この3点のどれかが崩れる種目は、今の段階では優先しなくてよい種目です。

腰が痛いときは、腹筋を休んだほうがよいですか?

痛みが出た動作は、その日は中止してください。ただし、身体を動かすこと全体を止める必要はありません。腰に負担の少ない呼吸の運動や、股関節まわりを動かす運動は続けられることが多くあります。休むかどうかより、どの動作で痛みが出て、どの動作なら出ないのかを分けておくほうが、次の判断に役立ちます。安静にしていても痛む、夜に痛みで目が覚める、脚にしびれや力の入りにくさがあるという場合は、自己判断で運動を続けず、整形外科を受診してください。

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